浅沼璞
しれぬ世や釈迦の死跡にかねがある 西鶴
聖なる神仏と俗なる金銭とのリンク。
前書が何種類か残ってるが、一句として鑑賞しよう。
上五の「や」は文語の切字というより、大坂弁の詠嘆に近いだろう。典型的な初期俳諧の口語調だ。
〈想定外の浮世や。無欲を説いたお釈迦様かて、死に跡にヘソクリ残しとる〉
意外なことの喩えとして、釈迦の私金(わたくしがね)という諺が当時あった。諺の引用はブームだった。
(下五は近松の浄瑠璃っぽく「ね」「る」をやや高音で)
ところで一茶なら「涅槃図に賽銭箱」と解する(解した?)だろうか。自分でもこんな風に詠んでる。
ねはん像銭見ておはす顔も有 一茶「七番日記」
御仏や寝てござつても花と銭 仝「八番日記」
一茶の文化句帖には浮世草子に関したメモも残ってる。ある面、一茶は遅れてきた談林派だった。たぶん。
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