相子智恵
雨上がりのやうなメロンを掬ひけり 河内静魚
句集『夏夕日』(文學の森 2018.6)所収
〈雨上がりのやうなメロン〉とはどんなメロンだろうか。
雨に洗われたような瑞々しい美しさ……はもちろん感じられるのだが、私は雨上がりのムウッと湿った空気の匂いを真っ先に想像した。ウリ科特有の植物の匂いと、夏の雨上がりの湿った匂いとは、言われてみればどこか近い。
〈雨上がりのやうな〉の詩的なたとえを〈掬ひけり〉のスッとした締め方で受けて、繊細な美に傾けてある句だとは思う。しかしながら〈雨上がり〉に内包されるイメージの大きさが、一句の美の振れ幅を大きくし、野太い命を吹き込んでいる。ここに描かれたメロンは単にキラキラと美しいだけではなく、そこに湿った匂いという「生命力」が感じられてくるところが強いと思うのである。
このメロンは、きっと美味い。
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