〔週末俳句〕
家族でする句会
千野千佳
2年前の夏、句会が楽しくてしょうがなかったわたしは、自分が主宰となり句会を開くことにした。できれば6人くらいでやりたい。
メンバーをどうしよう。わたしが普段参加している句会のメンバーを誘うのは畏れ多い。職場のひとを誘ったらドン引きされそうだし、ごはんに行く友達は今は1人しかいない。ということで家族を誘って句会をすることにした。
せっかくなので、俳号をつけることにした。
父、俳号「海士」(うみし)。海に潜ってサザエやもずくを採るのが趣味。自らこだわりの俳号をつけてきた。
母、俳号「こつぶっこ」。亀田製菓のお菓子こつぶっこのキャラクターに似ているので。
姉、俳号「キツネ」キツネ顔。
友達、俳号「みやじ」エレカシのファン。
友達の父、俳号「鶴の爺」俳句の腕に覚えありとのこと。
わたしの俳号はスイスロールとした。
1人3句出し。お題は「花火」「夏休み」「その他自由」とした。無記名で短冊に各々記入。3句✕6人で18句集まった。その中から1人3句いいと思うものを選び、うち1つを特選とする。友達とその父は投句のみの参加となった。
わたしの父と母はあまり本も読まないし、勉強を熱心にするタイプではない。姉も同様。句会をやりたいと言うと、父と姉は面白がってやる気になったが、母はそんな難しいことは嫌だ、と言った。母は勉強が苦手で、作文なんてもってのほか。わたしが中学生の頃、母の日記を盗み見て、誤字や文法上の誤りを指摘したら、「いやな子だね」と言われた。
母が作った俳句をみせてもらったら全く意味が通じないものだったので、わたしが手を入れた。
おのおのの作品を一つずつ紹介する。
大花火五秒遅れて届くおと 父(海士)
墓参りBGMはひぐらしで 姉(キツネ)
教えてよ手持ち花火のできる場所 友達(みやじ)
えごを煮る木べらの重くなりにけり 母(こつぶっこ)
昼寝する孫を囲んで笑顔かな 友達の父(鶴の爺)
ひぐらしや母の手紙の誤字だらけ 私(スイスロール)
一番人気はわたしの句「ひぐらしや母の手紙の誤字だらけ」。よかった。内輪ネタを盛り込めたのが高評価につながった。あとは鶴の爺の句が人気を集めた。わかりやすく、まとまりもよい。しかし父が「鶴の爺の句はありがちなんだよなぁ」とつぶやいていた。わたしは父を見直した。
俳句なんてどうしたらいいかわからない、と言っていた面々も、いざ作るとなると指で音数を数えたりして、数日間は頭が俳句モードになっていたようだ。自分で作った俳句には愛着がわくもので、句会で自分の句が読まれるがどうか、とてもどきどきする。句会の一番の醍醐味だと思う。主宰ぶって、「この句のどこがよかったのですか?」と聞いてみたが、面々は少し恥ずかしそうに「なんとなくだよ」と答えていた。
句会を終えて楽しくなったわたしたちは、近所の夏祭へ直行し、東京音頭の輪の中へ飛び込んだ。踊りという季語でなにか作れないかと考えながら。
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