相子智恵
もう一度母が華やぐ盆提灯 池谷秀子
句集『ジュークボックスよりタンゴ』(本阿弥書店 2018.7)所収
母の新盆だろう。〈もう一度母が華やぐ〉によって、生前の母の華やかな美しさや、周囲を明るく照らすような性格が思われてくる。きっとそういう人だから、親戚などから感謝を込めて盆提灯がいくつも贈られてきているのかもしれない。精霊棚が華やいでいる。
一方〈もう一度〉によって、亡くなる直前の故人の静かな様子、そして亡くなった後の静けさがより深く伝わってくる。
失った悲しみを湿っぽく詠まずに、故人の人物像が見えてくるような明るさをもって描いたことで、逆にしみじみとした読後感のある一句。
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