樋口由紀子
ご遺族といわれて遺族かと思い
玉利三重子 (たまり・みえこ) 1935~
「あっ、そうだった」「これはわたしのことだ」とはっとする。斎場に行くと「ご遺族さま控室」がある。係りの人に「ご遺族さま」と案内もされる。言われてみて、そうか「遺族」として参列しているのだと気づく。遺族として参列していても、遺族の実感がない場合がある。身内ならさすがにそうではないが、会ったこともない、顔も知らない遠い親戚の葬儀に出ることもあるからだ。
ふと感じる意識のずれと日常の違和の表明。なおかつ、かすかな問題意識を持って一句を成立させている。乾いた書きぶりで、人の心の微妙な綾を突いている。〈猫といる時間がとてもやわらかい〉〈町内のことに詳しい猫のひげ〉〈狂わずに生きて喜劇の中にいる〉
0 件のコメント:
コメントを投稿