2018年10月18日木曜日

●梨 西原天気



西原天気


西のほうで暮らしていたせいでしょう、梨といえば、きまって「二十世紀」、産地といえば鳥取県でした。

  前世紀の遺物の梨を食うてをり  三島ゆかり〔*〕

カシカシと果肉に歯が入るたび、果汁がほとばしる。みずみずしい品種です。

東京近郊に移り住んでからは、とんと「二十世紀」を見なくなりました。幼いときの反動はこの分野にもあらわれ、好みはしだいに、やわらかい梨へ、「二十世紀」とは対照的に食感がムニムニとした洋梨へ。

  洋梨喰ふ夜はひたひたと沖にあり  櫻井博道

  洋梨とタイプライター日が昇る  髙柳克弘

  洋梨はうまし芯までありがたう  加藤楸邨

ありがとう、梨。ありがとう、いろいろな梨。


〔*〕『鏡』第29号(2018年10月1日)

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