梨
西原天気
西のほうで暮らしていたせいでしょう、梨といえば、きまって「二十世紀」、産地といえば鳥取県でした。
前世紀の遺物の梨を食うてをり 三島ゆかり〔*〕
カシカシと果肉に歯が入るたび、果汁がほとばしる。みずみずしい品種です。
東京近郊に移り住んでからは、とんと「二十世紀」を見なくなりました。幼いときの反動はこの分野にもあらわれ、好みはしだいに、やわらかい梨へ、「二十世紀」とは対照的に食感がムニムニとした洋梨へ。
洋梨喰ふ夜はひたひたと沖にあり 櫻井博道
洋梨とタイプライター日が昇る 髙柳克弘
洋梨はうまし芯までありがたう 加藤楸邨
ありがとう、梨。ありがとう、いろいろな梨。
〔*〕『鏡』第29号(2018年10月1日)
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