2019年7月1日月曜日

●月曜日の一句〔乾佐伎〕相子智恵



相子智恵







永遠に開く花火を一人探す  乾 佐伎

句集『未来一滴』(コールサック社 2019.8)所載

〈永遠に開く花火〉など現実には存在しない、ということは分かっている。一瞬の儚さこそが花火だということは。だが〈一人探〉さずにはいられないのだ。〈一人探す〉がきっぱりとしていて、それは詩へ向かう決意のようにも読める。

〈ねむりても旅の花火の胸にひらく 大野林火〉をふと思い出す。林火の、ひとりでに静かに溢れ出てきた抒情的な永遠の花火とは違い、掲句は自らそれをつかまえにいく強さがある。林火はそれに出会えていて心が温かくなるけれど、掲句には、今はそれが見つかっていないという泣きたくなるような寂しさがある。

一人は孤独だけれど、ひとりひとりの胸の中にしか〈永遠に開く花火〉はないことを、古今の二人の俳人は痛いほど分かっている。だからどちらの花火の句も切なくて、美しい。

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