樋口由紀子
カラオケでオクラを茹でるうつくしさ
暮田真名 (くれだ・まな) 1997~
私は素麺を茹でるときに一緒にオクラも茹でて薬味にする。オクラはさっと緑色になり、本当にうつくしい。しかし、「カラオケで」がわからない。「カラオケ」は伴奏のみの音楽に合わせて歌うものだが、どうやって?「空の桶」のなのか。それにしてもへんである。しかし、このわからなさ、やすやすと意味がつながってくれなさが、散文とは異なる立ち位置を確保しているように思う。
〈フロートがいやというほど降るらしい〉〈甘食はすいすい自転車に乗る〉〈ダイヤモンドダストにえさをやらなくちゃ〉などどの句も難しい言葉は使われていないが、感性でつないでいるようで、どう読み解けばいいのかわからない。日常の世界と切れ、一般的な価値体系の外側で存在感を意識的に生みだている。そこで意味を生動させ、日常とは違う概念を発生させている。独自のポエジーである。『補遺』(2019年刊)所収。
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