樋口由紀子
胸のアフリカ見知らぬ魚の眼と出会う
山村裕 (やまむら・ゆう) 1911~2007
「胸のアフリカ」という言葉のセンスに惹かれる。そんなアフリカを見知らぬ魚の眼と出会わせている。「胸のアフリカ」で切るのではなく、「が」が省略されて叙述されているのだろう。
未開の、広大で、混沌としていて、どう形容したらいいかわからない「胸のアフリカ」。それが見知らぬ魚の眼と出会った。生まれも育ちも形も大きさもまったく違う二つが出会った。アフリカも魚もいままで実際に知る機会がなかったモノ同士だったに違いない。
偶然出会ったのか。それとも出会うべくしての出会いだったのか。そのとき、胸のアフリカはぞっくとするような生の実感がよみがえってきたはずである。魚の眼はエキゾチックで存在感があり、なんともいえぬ高揚感と緊張感をもたらしてくれたのだろう。
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