樋口由紀子
転居先不明でもどる掛布団
菊地良雄 (きくち・よしお) 1944~
手紙だとかはありそうだが、もどってきたのが掛布団というのは奇妙で可笑しい。同時に掛布団の肌触りが新鮮な感触と戸惑いを生み出している。他にもどってきたものはなかったのか。敷布団はどうなったのだろう。予想外の成りゆきでうろたえているようだが、それほど深刻ではなく、どこか漫画的でもある。
生きていると何かの拍子にいろんなことに出くわす。そのときはどうすればいいのか。掛布団のように行き場を見失うのは私自身かもしれない。掛布団だけがもどってくる不条理が再現される。不思議な世界観である。「ふらすこてん」(第54号 2017年刊)収録。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿