相子智恵
コンビニの花火がしょうもなくて笑う 木田智美
コンビニの花火がしょうもなくて笑う 木田智美
句集『パーティーは明日にして』(2021.4 書肆侃侃房)所載
今年は平年より、梅雨入りがかなり早いようだ。梅雨明けも早いのだろうか。本格的な夏がやってくるのももうすぐなのだろうが、コロナ禍で夏らしい夏が楽しめなかった去年に引き続き、きっと今年もそうなのだろうというあきらめの中にいる。
花火もすっかり遠いものになってしまって、掲句のきらきらとした花火の句を読み、ああ、いいなあとしみじみしてしまった。
コンビニの花火を買う時点で、作中の人物は若者なのだろうと想像されてくる。きっと、コンビニで晩ご飯やおつまみ、お菓子、缶ビールや缶カクテル、明日の朝のパンも買ったりして、家飲みをするのだ。そこで花火を見つけて、「花火もやっちゃう?」と。
コンビニの花火は量も多くは入っていない。やってみたら少なくて、手花火も、楽しみにしていたドラゴン花火もすぐに終わってしまって、最後に取っておいた線香花火の玉もあっという間に落ちてしまった。そのショボさに「しょうもな!」と言いながら笑いあう。その後は結構まじめな話なんかもしたりなんかして、楽しい夜が続くのだ。
何年経ってもしみじみと思い出す、楽しくも切ない一瞬のきらめき。現代の青春詠とはこのような句を言うのだろう。歳時記の花火の例句に、新たに加えてほしい一句だと思った。
●
コンビニの花火の妙な軽さかな 折戸洋
返信削除