樋口由紀子
香典を入れたかいなと透かして見
延原句沙弥(のぶはら・くしゃみ)1897~1959
香典袋にお金を入れたかどうか自信がないことは誰だって一度や二度は経験している。封をしているので、開けるわけにはいかず、明るいところで確かめている。典型的なあるある川柳である。「入れた」「透かし」「見」の具体性で時間と動作を決まり、人物が作り出される。生活の輪郭を色濃くし、人を滑稽に抽出する。
〈知ってゐる名前が喉でひっかかり〉など句沙弥は些細な、見過ごしてしまいそうな行為をうまく川柳のカタチにする。遊び心を以て、人を愉快に映し出している。『延原句沙弥川柳句集』所収。
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