樋口由紀子
錆びた空気が出てくる十二月のラッパ
堀豊次 (ほり・とよじ) 1913~2007
もう十二月である。あっという間に過ぎたような気もするが、長かったような気もする。この一年は例年以上にいろいろなことがあった。否応なく一年を振り返ってしまうのが十二月である。
あんなに切れ味のよかった包丁もぴかぴかだったステンレスもところどころに錆が出る。水分で錆びは加速する。この一年には涙したこともあったと、ついセンチメンタルにもなる。思うようにならないのが人生で、ラッパもいつも高らかに鳴るとは限らない。「錆びた空気」とはうまく捉えたものだと感心する。十二月になるとそんな空気と一緒のラッパの音があちこちからも聞こえてきそうであり、私自身もきっと出しているのだろう。
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