樋口由紀子
電柱を抜いて帰ろうかと思う
桒原道夫 (くわばら・みちお) 1956~
実際には見たことはないが酔っぱらった人が電柱にぶつかり、怒っているとか、説教しているとか、格闘しているとか、しいては抜いて帰りそうなことはありそうである。「かと思う」のだから、自分を見失っているのではなく、かなり冷静だが、そう思うのは尋常ではない。
「抜いて」「帰ろう」「思う」のズレている連想、調子はずれが現実との違和感の感触を再生させる。「わたし」「いま」「ここ」の立脚点から自分の所存を明らかにする一方で、こういう人生もあるのかと思っているのだろう。『近・現代川柳アンソロジー』(新葉館出版 2021年刊)所収。
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