2022年2月11日金曜日

●金曜日の川柳〔須崎豆秋〕樋口由紀子



樋口由紀子






葬式で会いぼろいことおまへんか

須崎豆秋 (すざき・とうしゅう) 1892~1961

一昔前の葬儀風景を切り取っている。今や過去の景となりつつあるが、当時はふつうの家庭でも数十人の参列者があり、企業などの関係者の葬儀では百人単位の弔問があった。「葬式外交」という言葉まであったのだから、どこでも見られたごくありふれた景である。

しかし、この場面を句材として、川柳のカタチにしようとはなかなか思いつかない。「葬式」と言うと悲しみとか喪失感が先行し、その感情をまず優先させてしまうが、豆秋の目のつけどころは違っていた。ユーモアとアイロニーを加味して、葬儀のリアリティを強烈に確保しつつ、アトクサレなく、あっさりと川柳に仕上げた。関西弁のしゃべり言葉の不思議なちからを生かし、平板な文体に味を出している。『ふるさと』所収。

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