樋口由紀子
十円のちがい金魚の尾がきれい
高橋散二 (たかはし・さんじ) 1909~1971
毎朝、スムージーを飲む。最初は安価なバナナで作っていたが、友人の一言で少し高いバナナに変えた。出来上がったスムージーの味はまったく違う。バナナの値段は正直だった。お金のことを持ち出すと品がないと言われるが、値段は購買の判断基準の大きな決め手である。
すべてに当てはまるとはかぎらないが、金魚もそうであるらしい。可愛いく美しいが、その中でもひときわ尾のきれいな金魚の値段は他の金魚より十円高い。「なるほど」と思ったのだろう。金魚売りはだてに値をつけていなかった。この句が書かれた時代は十円の価値はもっと違っていたはずである。「十円」が絶妙で、金魚の尾のきれいさを想像する。金魚は買ってもらえるように尾をよりひらひらさせ泳ぐのだろう。『花道』(1973年刊)所収。
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