樋口由紀子
蝶を詰め込んで苦しむ夏銀河
倉本朝世 (くらもと・あさよ) 1958~
「夏銀河」に対するみごとな注釈であり、見解である。あのきらきらを苦しんでいると感じた。それは「蝶を詰め込んで」いるからであり、蝶を詰め込まなければ、あるいは蝶が集まってくることがなければ、夏銀河は苦しむことはなかった。「苦しむ」を置くことによって一気に現実に引き戻される。
この世からはきらきらと美しく見えるものが実はそうではなかった。苦しみもがいて、のたつちまわっているから、きらきらと輝いているように見える。「夏銀河」の実体を超えて、生々しく描写している。『硝子を運ぶ』(1997年刊 詩遊社)所収。
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