樋口由紀子
二人乗りしても結婚しなかった
西澤葉火 (よしざわ・ぱぴ) 1964~
誰の後ろに乗っていたのか、どこを走っていたのかはもう忘れたけれど、「二人乗り」という言葉で遠い昔にそんな初々しい青春が私にもあったことを思い出す。自転車の荷台から落ちないように、しっかりと前の人の背中につかまっている姿は相手への信頼も愛情もマックスである。
しかし、二人乗りしただけでは結婚はしない。二人乗りしたぐらいで結婚するなら、世の中はもっと単純で簡単になる。一方、二人乗りしたから、この人と結婚するかもしかもしれないとちょっと思ってしまうところもある。人のおかしみ、かわいさ、ヘンさ、滑稽さ。そこをうまく突く。なんともばかばかしいことをわかって書いている。『「らくだ忌」第一回川柳大会作品集』(2022年刊)収録。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿