樋口由紀子
流し台にあるいい銃悪い銃
榊陽子 (さかき・ようこ) 1968~
最初はアメリカの家庭風景を詠んだものかと思ったが、どこかへんである。それに銃に「いい」「悪い」と区別をするのもおかしい。家庭の流し台に銃があるという「アブナサ」と、「いい」「悪い」と区分する「アブナサ」が乱反射する。線引きを施こすことであぶりだされてくるものがある。日常生活に虚構性を無理やり押し込んで、無理やりが一句に厚みを出す。あたかもそんな日常がすぐ目の前にあるかのように、底の知れない恐ろしさを漂わす。
ためらいも力みもなく、言葉で常識の範囲を軽々とはぐらかしていく。あっさりと表現しているようなふりをしながら、さりげなく大きなものに立ち向かっている。よく見える目で冷静に鋭く、そしてしたたかに世界を見ている。深い批判精神がある。
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