2022年10月31日月曜日

●月曜日の一句〔志村斗萌子〕相子智恵



相子智恵






星飛んで結末変はる物語   志村斗萌子

句集『星飛んで』(2022.8 ふらんす堂)所収

物語とは終わりまで書かれたものを読むものだから、普通は結末が変わることはない。あらかじめ二通りの結末が用意されていたり、読み方で結末の解釈が変わる趣向の小説もあったり、もちろん未完の物語というものもあるにはあるのだが、掲句はそのような既存の物語を指しているのではなさそうだ(もちろんそのような解釈でもよいが)。

現在進行中の物語(それは人生と置き換えてもよいかもしれない)のただ中にありながら、結末(未来)からの視点で詠んだ句だと個人的には受け取りたい。〈星飛んで〉という季語の選択によって、そのような読みが浮かぶのである。

流星という不意に巡り合うものによって、物語(人生)の結末が思わぬ方向へと流れていった。そんな巡り合わせがいくつも起きて、後から振り返ってみれば、結末が予定とは大きく変わっていたと気づく。それを物語(人生)の途中で句に書きつけているのだから、何だか結末と今とをずっとワープし続けるような、不思議な多重性を味わうのである。

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