2024年2月16日金曜日

●金曜日の川柳〔守田啓子〕樋口由紀子



樋口由紀子





ムナカタの眼鏡で見てる だから晴

守田啓子 (もりた・けいこ)

「ムナカタの眼鏡」を検索した。フレームにインパクトがある。しかし、その特定の眼鏡で見たからといって、晴になるわけでない。そう思いたいのだ。異なるルールを持ち出し、今居る場所を更新する。

「だから」がおもしろく使われている。一般的には辻褄を合わせ、理屈をつけて終わるが、ここでは役目を果たさないで、「だから」でズレを作り出す。ズレをどう見せるかに工夫されている。「曇った眼鏡」の対抗のように、眼前の現実世界の向こうに虚構を乗せて運ぶ。なぜ「だから晴」なのかはわからないままにして、余韻を残すのがこの句の持ち味だろう。「触光」(80号 2023年刊)収録。

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