2024年5月27日月曜日

●月曜日の一句〔佐怒賀正美〕相子智恵



相子智恵






かたつむり窮屈スマホの縦画面  佐怒賀正美

句集『黙劇』(2024.1 本阿弥書店)所収

掲句、現実のかたつむりがスマートフォン(スマホ)の画面の上を這って窮屈そうだ……ではなく、目の前のかたつむりにスマホのカメラの縦画面を向けて撮影しようと四苦八苦している場面、あるいはスマホの縦画面でかたつむりの写真や動画を見ている場面、と読むのが自然だろう。

縦長画面のスマホとSNSの普及により、人々や企業が「スマホで見ること」に最適化していった結果、漫画やドラマなど、最初から縦の画面に収まるように縦長に制作する「縦画面コンテンツ」が増えているという。

かたつむりはもちろん、体が横に長くて、地面や水中を横方向に動きまわる多くの動物たちの自然の姿は、縦画面には収まらない。もっと言えば、横画面にも収まらないのが自然だが、窮屈度合いは、横よりも縦のほうが増す。

人間は、立って全身を映すには縦画面が適しているし、縦画面にすると人間は「集中しやすい」という特徴があるようだ。(NHK「クローズアップ現代」より)それと引き換えに、周辺情報は遮断される。それが自然な状態だとは言えないだろう。掲句、スマホとはまさに人間に最適化した道具なのだ、という批評も感じる。かたつむりは周辺を失い、また、画面上で自分の体の一部も失い、いかにも窮屈そうだ。

 

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