2024年7月19日金曜日

●金曜日の川柳〔木下愛日〕樋口由紀子



樋口由紀子





人はみな若き日をもつ角砂糖

木下愛日(きのした・あいじつ)1900~1984

喫茶店でコーヒーカップの皿に角砂糖が二個ついていた時代の川柳だろう。珈琲に入れるとみるみる砂糖が角から溶けて、跡形のなく消えて、珈琲が一気に甘くなった。人は誰でも角砂糖のように甘くて角がある若い日があった。

先日の句会で参加者の中で最高齢であった。若い人たちは眩しく、もうそういう年齢になったのかと軽いショックを受けた。あっという間に歳をとる。そんな心情を「角砂糖」に添わせている。甘さ、大きさ、形状を受けとめて、「角砂糖」の体言止めが効果的に使われている。『愛日』所収。

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