〔中嶋憲武まつり・第9日〕
中嶋憲武「愛の洋菓子」5句を読む その2
よむ、はひらがな
小林鮎美
シネラリア前衛俳句百句よむ 憲武
なんかあんまり詳しくないので、「前衛」とか言われると、入り組んでいて、ごつくて、解りにくいものだ、と思ってしまう。たぶん「衛」という漢字のせいだ。字の見た目が入り組んでいて画数が多いし、普段使わないから。自衛や防衛っていう言葉のせいか、軍事的・政治的な匂いも感じる。
で、「前衛」という語にはカタカナが似合う。「前衛」っていう概念自体が外国から入ってきたからだろう。だからやっぱり、前衛俳句に添える花はカタカナの花。品種が多く、色とりどりに咲くサイネリアは「前衛俳句百句」に付けるにはぴったりだ。そして現在広く使われている「サイネリア」という呼称ではなく、「死」という語に繋がるとして避けられている「シネラリア」を置いたことには、やはり意味があるのだろう。
ただ、この俳句には「前衛俳句は死んだ」と言いたいというニュアンスより、「シネラリア」の横に「前衛俳句」を置いても別にいい、みたいなさらりとした作者の態度がみえる気がする。だって、「よむ」はひらがなだ。
私には、この何気なさが、すごく大事な感覚に思える。
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含羞と懐古趣味的フェティシズム
齋藤朝比古
コサージュの揺れて卒業生らしき 憲武
コサージュである。昭和のアイドルがこぞって胸元にあしらっていた、この懐かしき響きを伴った装飾品がそよそよと揺れて「あぁ卒業生なのかも…」などと思ったのである。「らしき」あたりに、作者の含羞と懐古趣味的フェティシズムの一端を垣間見る、ちょいと頬を赤らめてしまうような風合いを持つ一句。中嶋憲武氏、ときどきこういう句を確信犯的に発表したりするから、曲者。
でも昨今の卒業生、コサージュってつけてます?どちらかというと保護者の方に多いような気がするんですけど…。
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