相子智恵
和船ぎぃと進み入道雲多淫 橋本 直
「鬼」合同作品集『水の星』(2011年5月21日発行)「エイチ」より。
実験的俳句集団「鬼」(復本一郎代表)が15周年を期に、20~40代の有志8名の俳句・詩・エッセイを一冊にした合同作品集を刊行した。昨今、このように同世代の作品がまとまって読める流れができてきたのはうれしいことだ。
さて、掲句。遠近感はあるのに細部までみっちりと細い線で書き込まれた、浮世絵のような味わいの句である。入道雲が多淫だというのにまず驚くが、たしかに湧き立つ入道雲はエネルギッシュ。そして木製の和船の艪が立てる「ぎぃ」の擬音がよく響いて「みっちり感」を際立たせている。言葉がギュウギュウに詰まりながらも、構図の美しい風景句として成立しているのだから、なんだか不思議な世界である。頭の中に楽しい画を描いてくれた一句。
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松尾清隆「赤と青 アンソロジー『水の星』発刊によせて」
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