樋口由紀子
ご公儀へ一万匹の鱏(えい)連れて筒井祥文 (つつい・しょうぶん) 1952年~
昨今の政局を見ているとふとこの句を思い出した。でもなぜ「鱏」なのだろうか。どうせ連れて行くなら「鮫」の方が迫力のありそうな気がしていた。先日、須磨水族館で飄々と泳ぐ鱏を見た。けったいな魚である。見学者をからかっているような泳ぎっぷりで、こんな魚を引き連れて来られたら適わないだろうなと妙に納得した。同じ水槽には鮫もいたが鮫の方がナチュラルだった。鮫ならば来る理由もわかるし、来られる方も対処の仕方がありそうだが、鱏ではどうしようもない。セレクション柳人『筒井祥文集』(邑書林 2006年刊)所収。
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