相子智恵いくたびも手紙は読まれ天の川 中西夕紀
句集『朝涼』(2011.7/角川書店)より。
この句は〈いくたびも手紙は読まれ〉と手紙を主体にすることで、手紙を書いたり読んだりした「人」の匂いをあえて感じさせない表現となっている。それにより、手紙そのものの本質に迫っていると感じた。
何度も読み返したくなるような、心をつなぐ手紙は、はるか昔から無数の人々の間で取り交わされてきたし、これからも交わされることだろう。
そんな古今東西の数限りない手紙の束と、人と人との心の交流を思うとき、無数の星の集まりである〈天の川〉の輝きを同時に感じることができる。
〈天の川〉の星々の光が地球に届くまでの時間・空間の広がり、川に見えるほどの星の密度。それらが、古今に交わされ、何度も読み返された数限りない手紙の時間・空間の広がり、無数の人々の心にともった光と響きあうのだ。
じつに美しい取り合わせの一句である。
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