2011年11月14日月曜日

●月曜日の一句〔今井豊〕 相子智恵


相子智恵








すれちがふ少女寒気のつぶてめく  今井 豊

句集『草魂』(2011.6/角川書店)より。

このところ、忙殺されていて毎日の記憶が薄い。そしていつの間にか、冬が立ってしまっていた。なんということだろう、万事が速すぎる。

……とはいえ、この句の颯爽とした速さには生き返る。冬らしい強さと楽しさがある。

少女が駆けてきて、作者とすれ違ったのだろう。すれ違う一瞬、少女が起こす風を感じる。その〈寒気のつぶて〉を投げるようなスピード感。

ランドセルで駆け抜けた小学生か、あるいは足早に闊歩する女子高生でもいいかもしれない。

言葉の感触は冷たいのに、この句には熱さがある。それは〈寒気のつぶて〉に、少女の生命の熱が込められているからだ。

大人になってからの「記憶の薄い速さ」と、少女の「生命が熱い速さ」は、真逆である。
記憶が薄い速さはいやだ。生命の熱い速さがいい。

空気がキリッと澄む冬はなおさら、そういう速さがいい。



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