2011年12月27日火曜日

●エロ虫道中記 関悦史

エロ虫道中記

関 悦史


12月23日の俳コレ竟宴の際、家が遠いので宿を取った。

その宿に山田露結さんも同宿することになった。

直接会ったのは去年の超新撰竟宴のとき一度きりだったと思うがツイッター上ではおなじみである。

そこに御中虫さんも京都から参加することになり、道に迷わないよう同じホテルを予約した。

すぐにこの三人の頭文字を取って「エロ虫」なるユニット名ができたが、果たしてこれがユニットなのか何なのかはあやしい。

少なくとも、今後特に三人で何かやる予定は今のところない。

竟宴当日は、市ヶ谷駅で待ち合わせたが、集まる前後「エロ虫」「エロ虫」とツイートしていたら、フォロワーが四人ばかり減った。

三人で駅前の喫茶店に入ったら、突然クリスマスプレゼントの交換会となった。

私がもらってしまったのは、露結さんからはソフト帽、虫さんからは銅板を打ち出してマンボウを描いた自作作品である。私の顔写真を見てマンボウを連想したらしい。

露結さんから虫さんへは鹿の毛皮のような柄のモフモフした帽子、虫さんから露結さんへは虫さんが絵を描いた京都弁カルタ(市田ひろみのCD付き)なるものが行った(他にもう一点公表不能の物件も)。

私は何も用意していなかった。人としていささかまずいのではないか。

竟宴パーティではスピーチに指名された露結さんが、いきなりRCサクセション「スローバラード」を歌いだした。この辺の行動、露結さんの作風と一脈通ずるところがなきにしもあらず。

都内では滅多に会えない虫さんもパーティで大人気だった模様。

来るときには装着していた真っ白なウィッグを虫さんがいつの間にか外してボーズ頭になってしまい、ウィッグのほうはどこをどう渡り歩いたのか、会場の隅に設営されたネット生中継用のインタビューブースで猿丸さんがかぶってニコニコしながら立っていた

遠くから見て、虫さんが急に背が伸びたかと思ったが、近寄ったら猿丸さんだったので直ちに奪い取り、私もかぶって、撰をさせてもらった野口る理さんと一緒にインタビューを受けた。話の内容や表情はごくマトモだったはずである。映像は見ていないが、そのことが余計に不条理感をかきたてた可能性はなきにしもあらず。

宿が取ってある安心感で三次会まで出てしまい、タクシーでホテルに入ったのが夜中の三時過ぎ。

翌朝、虫さんが喘息の発作を起こしたようだが、部屋にあった湯沸しを吸入に使ったとかで、チェックアウトの時間には落ち着いていた。

いつの間にか虫さんのお兄さん(都内在住らしい)の車に乗せてもらう計画になっていたらしくて、こちらもボーズ頭の虫兄氏到着とともに三人同乗、まずは露結さんが行ってみたいという築地市場へと向かう。

カーナビでは市場近くにいるはずなのだがどこなのか判らずにいたら、露結さんがいきなり車から飛び出した。警官を発見して道を訊いてきたのである。

おかげで無事、築地の場外市場にたどりついて(「場内」は業者しか入れない)、四人でうろうろ。厚めに削ったカツブシを試食に差し出されて露結さんは食いながら進む。


せっかくだから昼食に寿司でもと並びかけたがどの店も大行列で、印度カレーで済ませた。注文と同時にサッと品が出てきたが、大皿のカレーの飯の上に千切りキャベツが山盛りというもので、これは少食な虫さんには無理だった模様。


場外市場を一巡して、またカツブシを受け取ってモグモグしたりもしつつ露結さんがTシャツか何かを買ったら、店のおばちゃん二名が目引き袖引きしつつ、ついにこらえかねたという風情で「あんちゃん、いいキモノだね~」と寄ってきた。

こちらは何を隠そう呉服屋の若旦那であると私が紹介すると、「あらまー役者さんか何かかと思ったわ」などと適当なことを言い、露結さんの説明も、感心しているのか上の空なのかよくわからぬ調子で聞きつつ羽織の刺子を撫で回したりしているので、露結さんがおもむろに裾をはだけ、鯛がぎっしり書かれた真っ赤な襦袢を遠山の金さんの桜吹雪よろしくお目にかけると、「いや~!!(はぁと)」とも「うゎ~!!(はぁと)」ともつかぬ嘆息混じりの大絶叫。これはどちらにしても「(はぁと)」は付く。

何だかよくわからないが何ごとかを十二分に堪能した気分になって市場を出ようとすると、ホワイトボードの「拾得物掲示板」なるものがあり、ここに書かれた落し物がまた場所柄を反映した摩訶不思議なものだった。

「アジの開き」はまだいいとして「万能紋甲イカ」が既に何だかわからない。

これは後で検索して、細い切れ込みを無数に入れた、握ればそのまま寿司種にできる状態の紋甲イカと判明したが、「シルバー」とだけ書かれていたのはいったい何だったのだろう。

去りがけに皆で一句作ることになった。

   カレーライス食ふ冬麗の築地の市場  露結

   築地ぢゆうの段ボールを集めりや御殿が建つぜ 魚臭い  虫

   「シルバー」といふ落とし物鯵も烏賊も  悦史

露結さんのは飯島晴子の本歌取り、虫さんはどこへ行っても独自の着眼と威勢のよさがお見事、私は何も思いつかずに見たまんま。

吟行は苦手なのだよなどと言いつつ、さて次に向かったのが虫さんが行きたかった神田神保町の古書店街。


虫さんが探していたのはリン・マーギュリス、ドリオン・セーガン『生命とはなにか』なる本と、ガイア仮説に関する本、それからラブクラフトだったらしいのだが、古本というのは決め打ちして出てくるものではないので、どれも見つからず、虫さんは代わりに渡辺公三・木村秀雄『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』とマーティン・ガードナー『ルイス・キャロル―遊びの宇宙』の2点を購入。

田村書店のワゴンを私がざっと確認している間に店内を見た虫さん、かつてのバイト先がちょうどこんな感じで一緒やわという。

虫さんが中にいるうちに露結さんが隣りの小宮山書店に入っていったので皆で追ったら、ここはしばらく来られないでいるうちに、中が古書店というよりは画廊に近い雰囲気になっていて、いたるところに版画、ポスター、玩具、人形等が置いてあった。

古書店街もひととおり見て靖国通りを駐車場へと戻りかけたが、白山通りとの交差点で信号を待っている間に、露結さんが「横尾忠則の版画10万円のがどうにも気になる。カード使えるかな」と言いだしたので、全員一応つきあって小宮山書店まで引き返す。

階段の上にかかっていた版画を皆で再確認している間に、店員と話していた露結さん、即座に購入を決めて、見る見るうちに発送手続きに入ってしまった。

驚いて《買ったぁあああ!!》などとツイートしたら、喫茶店で休んでいるうちに四ッ谷龍さんから返信。

永田耕衣さんから教わった河井寛次郎の名言、「物買って来る、自分買って来る」。良い買い物をなさいました。

虫さんは一連の露結さんの男っぷりに賛嘆頻り。

紀伊国屋新宿本店の俳句本フェアも見たかったところだが、露結さんの帰る時間が迫っていることとて断念。

東京駅前で降ろしてもらい、別れを惜しんで露結さんと虫さん、虫さんと私の順で握手、そのままさらにぐじゃぐじゃモフモフと冬着の上からハグしあって、ついでに露結さんと虫さんから尻を触られまくる。

この辺、何でこんなことになるのか分からない人には全然分からない話だが、先日、西原天気さんの句集出版記念会のときに、榮猿丸さんが触らせてと唐突に言い出し、猿丸、佐藤文香の二名から尻を撫で回されるという事態が出来して、それ以後縁起物なのか何なのか、無闇に撫で回されてられることになってしまったのである。竟宴パーティでも他の人たちから散々撫で回された。説明してみても結局何だかよくわからない。

虫さん兄妹と別れて改札へ向かう途中、露結さんが一言。「触れてよかった。あのタイミングで触らなかったら男二人になってから公衆の面前でじゃ触れませんからね。」

こうして「エロ虫」東京見物の一日は終わった。



写真提供:山田露結/写真リンク(thanx):spica虫日記R6

【関連リンク】
楽しすぎて適当にしか書けないんですよね:虫日記R6
「エロ虫」写真館:Rocket Garden~露結の庭

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