相子智恵川明り一気に開く屏風にも 宇多喜代子
句集『記憶』(2011.5/角川学芸出版)より。
日暮れた後の川がほのかに明るい。夜のはじまりの景である。
この屏風は川辺の料亭のようなところにあるのだろうか。窓辺に置かれた屏風に、川明りがほのかに反射して、ぼうっと明るい。
それだけではなく、この句には重層的なイメージの広がりがある。
折り重なった屏風が一気に開かれ、まるで屏風が一本の蛇行した川のように一枚に広がるからだ。川のように蛇行した屏風は、室内に川明りを放つかのように周囲をさっと照らす。
ひとすじの川明りと、ぱっと川のように伸びてゆく屏風の明るさ。
きらびやかで美しい相似形である。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿