2012年1月9日月曜日

●月曜日の一句〔宇多喜代子〕 相子智恵


相子智恵








川明り一気に開く屏風にも  宇多喜代子

句集『記憶』(2011.5/角川学芸出版)より。

日暮れた後の川がほのかに明るい。夜のはじまりの景である。

この屏風は川辺の料亭のようなところにあるのだろうか。窓辺に置かれた屏風に、川明りがほのかに反射して、ぼうっと明るい。

それだけではなく、この句には重層的なイメージの広がりがある。

折り重なった屏風が一気に開かれ、まるで屏風が一本の蛇行した川のように一枚に広がるからだ。川のように蛇行した屏風は、室内に川明りを放つかのように周囲をさっと照らす。

ひとすじの川明りと、ぱっと川のように伸びてゆく屏風の明るさ。

きらびやかで美しい相似形である。


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