相子智恵雛飾る雛しまひたくなりながら 阪西敦子
アンソロジー句集『俳コレ』(2011.12/邑書林)より。
雛人形は女の子の成長を祝うとともに、その子の一生の災厄を人形に身代りにさせる形代(かたしろ)でもある。
そして雛人形というのは、一年のうちでしまわれている時間がほとんどだ。人形たちはずっと暗闇の中で眼を開いたまま、シンとしまわれている。その眼が光を浴びる期間は一ヶ月ほどしかない。
掲句は雛人形を飾る華やかな「明」の気分とともに、形代(かたしろ)としての人形に感じるうすら怖い感覚や、人形がしまわれている闇の深さなど「暗」の感覚をも同時に、鋭敏に捉えている。
飾るときに、もうしまいたくなってくる……という明暗織り交ぜた感覚は、みなが潜在的に感じていながらも、案外読まれていなかった視点ではないだろうか。
歳時記の例句にしたくなるような、再発見の句である。
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