第27回
バカ
西原天気
きょうは三鬼忌ですね(≫ウラハイ過去記事)。
1961年、三鬼61歳の秋、9月に胃癌発覚。10月9日、手術。退院後、翌年1962年は2月くらいまで仕事をしていたようですが、3月半ばからは病状が極めて悪化。4月1日、「朝より昏睡状態。午後12時55分永眠」〔*〕。
三鬼忌とエイプリルフールとが同じ日である、この符合のことは、「いかにも三鬼」といった言辞とともによく話題にのぼります。
「いかにも三鬼」という、その「いかにも」がどこから来るのかをきちんと説明するのは難しい(あるいは、そんな説明はあまり意味がない)けれど、三鬼忌とエイプリルフールの親和性のようなものは、ふだん目にする句でも実感することが多い。三鬼忌という季語を用いた句は、そこを「四月馬鹿」と置き換えてみても違和感がなかったりする(逆も同じ)。
三鬼忌とエイプリルフールがこんなにも相性がいいのは、その作風よりも、むしろ「人物像」にまつわるイメージによるもの、ともいえそうです。
レッテルそれぞれの妥当性をうんぬんしてもしかたがない。ともかく、こうしたレッテルの在庫一掃セール並みに安っぽい列挙が、「いかにもエイプリルフール」です。
ところで「fool」という英語、「馬鹿」と訳せば、それはそうなのですが、動詞で使うと、「バカをやる」「おどける」といった感じで、場合によっては、ちょっと甘美でせつなくもあるのですよ。
なお、「バカをやるぜ!」よりも、「もうバカはやらないよ……(ウソだけど)」のほうが、よほどロックだし、俳句です。とりわけ今日、エイプリルフールの日には。
〔*1〕『西東三鬼全句集』(2001年・沖積舎)年譜
〔*2〕『別冊「俳句四季」西東三鬼の世界』1997年・東京四季出版
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三鬼忌とエイプリルフールがこんなにも相性がいいのは、その作風よりも、むしろ「人物像」にまつわるイメージによるもの、ともいえそうです。
三鬼ほどたくさんのレッテルを貼られた文人もめずらしい。ちょっと多すぎません? ほんとに?と疑ってみたくなるレッテルも多い。「人買い」って(笑。「二丁目俳句」って(笑。
「俳壇の雑役夫」「俳壇の政治家」「乾杯屋」「漁色家」「色事師」「人買い」「密告者」「スパイ」「手品師」「女形」「誇り高き雑俳」「肉体俳人」「知性的抒情詩人」「高雅な俗人」「貴族」「俳句の鬼」「新興俳句の申し子」「新興俳句の旗手」「鬼才」「終生の演技者」「永遠の青年」「生活破綻者」「個人主義者」「先駆的モダニスト」「言葉の魔術師」「ヒューマニスト」「ニヒリスト」「ダンディスト」「エトランゼ」「コスモポリタン」「ボヘミアン」「ロマンチスト」「コメディアン」「ドンキホーテ」「ナルシスト」「ハイカラ」「二丁目俳句」「前衛」「絶望の文学」「虚無の文学」
まあよくもこうバナナの叩き売りみたいにべたべたレッテルを貼りつけたものだとあきれるばかりである。
(原満三寿「三鬼の風景」〔*2〕)
レッテルそれぞれの妥当性をうんぬんしてもしかたがない。ともかく、こうしたレッテルの在庫一掃セール並みに安っぽい列挙が、「いかにもエイプリルフール」です。
ところで「fool」という英語、「馬鹿」と訳せば、それはそうなのですが、動詞で使うと、「バカをやる」「おどける」といった感じで、場合によっては、ちょっと甘美でせつなくもあるのですよ。
なお、「バカをやるぜ!」よりも、「もうバカはやらないよ……(ウソだけど)」のほうが、よほどロックだし、俳句です。とりわけ今日、エイプリルフールの日には。
〔*1〕『西東三鬼全句集』(2001年・沖積舎)年譜
〔*2〕『別冊「俳句四季」西東三鬼の世界』1997年・東京四季出版
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