コモエスタ三鬼 Como estas? Sanki
第29回
唐突に
西原天気
中年や独語おどろく冬の坂 三鬼(1946年)
戦後、作句を再開してすぐの作。
すこしまえツイッター上で、若い人たちだろう、「この独語って、ひとりごと? それともドイツ語?」などという、微笑ましいやりとりを目にしたが、それはさておき、この句、「おどろき」の詠み込みというだけでなく、全体から勃発感、唐突感のようなものが鋭く立ち上がってくるのは、中年にも、冬の坂にも、もちろん独語にも、勃発、唐突の要素が色濃いからでしょう。
中年。
これ、経験してみると、「しだいに中年となる」といった感じではまるでなく、「ある日、気づくと中年だった」という感じ。間抜けなお伽噺みたいなものです。
坂道を行くコートの中にある、たるんで力のない物体、肉の固まり。これ、なに? あ、私だ。……てなもので。
このとき、三鬼46歳。書いている私は、中年も過ぎて初老と言うべき齢。もう一度、申し上げますが、気がつくと、こんなに年をとってしまっているのです。
リアル浦島太郎。これを驚かずにいられましょうか。
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