樋口由紀子
ぎゅうっと空をひっぱっている蛹加藤久子(かとう・ひさこ)1939~
加藤久子は宮城県岩沼市在住。東日本大震災で被災した。「大震災からまもなく一年になる。なにか書こうとすると、まだあの日から離れられない」(「杜人」233号)と書いている。被災地の日常はまだまだ戻ってはいない。
そんなときにふと目にした蛹の糸を張る姿が空とつながっているように見えたのだ。あんなに小さな蛹があんなに大きな空を支えにして生きていこうとしている。それも能動的にひっぱっているように思った。蛹に希望をもらったのだろう。それよりもそのように感じた自分にほっとしているのかもしれない。閉じ込めていたものから解き放されつつあるから「ぎゅうっと」と把握し、書きとめることができたのだろう。(「MANO」17号 2011年4月)収録。
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