●月曜日の一句〔山﨑十生〕 相子智恵
相子智恵羽化希ふ大黒柱春の宵 山﨑十生
句集『悠悠自適入門』(2012.4/角川書店)より。
夕暮れのあと、明るく艶めいた風情ある〈春の宵〉がおとずれる。そんな時分、家を支えている〈大黒柱〉が羽化して飛び立つことを強く願っているという。面白い句だ。
この〈大黒柱〉は、長年家を支えてきた、どっしりと重厚な柱を思う。家を支え続けて、はや百年以上が経っているかもしれない。つやつやと黒光りした木肌の質感を想像する。
そんな安定感のある大黒柱が、じつは眠りから覚めてキラキラとした羽根を生やし、重くのしかかった家から飛び立つことを夢に見て、強く願っている。
これから大黒柱を見るたびに思い出しそうな、不思議な春の一句である。
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