〔今週号の表紙〕第272号
夏服@文京区(Qino's Manhattan New York)
藤田哲史
七月七日は七夕だ。七夕伝説では、織姫と彦星が年に一度だけ天帝に会うのを許されている日。織姫と彦星は、天の川に隔てられた琴座のベガと鷲座のアルタイルであり、ふだんは会うことなく織姫は機を織り、彦星は牛を飼っているという。
が、しかし。ポストモダン甚だしい現代にあって、はたして彦星が昔ながらのやり方で牛を飼っているだろうか?
もしいまだ彦星が牛を飼っているとしたら、天上の世界においても、以前のような農耕用の牛の飼育ではうまくいかず、早々に食用の飼育にシフトせざるをえなかったのではなかろうか。
となると、事業としては、飼育場に加え、食肉加工場や熟成庫も完備、さらには輸送用冷凍トラックも必要になってくる。大掛かりな事業だ。そうやって、いつしか財を蓄えた彦星は議員に立候補当選、巨額の寄付もあって一躍地元の顔に。経営の面ではライバルを次々に買収しさらに事業を拡大。地元の権力と経済を牛耳った彼は、目下(天帝のおやじさんには内緒で)天の川の下に道路を通すトンネル掘削工事を計画中。最近の悩みの種は、ご当地ゆるキャラ「彦にゃん」(もちろん彦星がモデル)が滋賀県彦根市の「ひこにゃん」とバッチリかぶってしまいオリジナルをめぐって両自治体が裁判で争っていること。自身がプロデュースした「彦にゃん」グッズの膨大な在庫処理に戦々恐々としているのかもしれない。そうでないかもしれない。
織姫に「彦星も変わったねー」とか、言われてなきゃいいけど。
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