樋口由紀子
あじさい寺の冬を想像せぬことだ
小出智子 (こいで・ともこ) 1926~1997
ちょっと盛りは過ぎたけれどもあじさいがきれいだ。身の丈ほどの潅木に球状の淡紫碧色や薄紅色などの花は雨のうっとうしさを忘れさせてくれる。しかし、作者は半年後を思い浮かべている。
わざわざ足を伸ばしてあじさい寺に来たのに、ふと冬になったらこの庭はどうなっているのだろうと思ってしまった。花の美しさに酔いしれていればいいのに、それができない。勝手に想像して、余計な心配をして、興ざめする。やっかいな性分だと苦笑する。これが川柳眼なのだろう。
〈五十九歳これから川へ洗濯に〉〈可愛らしい鼠に描いてやりましょう〉〈病院の帰りは魚屋へ寄って〉どの句も発想の可笑しみがある。『蕗の薹』(私家版 1989年刊)所収。
わざわざ足を伸ばしてあじさい寺に来たのに、ふと冬になったらこの庭はどうなっているのだろうと思ってしまった。花の美しさに酔いしれていればいいのに、それができない。勝手に想像して、余計な心配をして、興ざめする。やっかいな性分だと苦笑する。これが川柳眼なのだろう。
〈五十九歳これから川へ洗濯に〉〈可愛らしい鼠に描いてやりましょう〉〈病院の帰りは魚屋へ寄って〉どの句も発想の可笑しみがある。『蕗の薹』(私家版 1989年刊)所収。
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