2012年9月27日木曜日

〔ぶんつぼ〕『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』 西原天気

〔ぶんつぼ〕
『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』
東日本編・西日本編
都築響一/ちくま文庫

西原天気

ぶんつぼ=文庫本のツボ


日本ゲテモノスポットめぐり。東日本編・西日本編2巻あわせて、紹介スポット数341件、計1100ページ強。カラー写真で埋め尽くされているので紙質もそれなり。1巻だけでOLさんの弁当くらいの重さがある。

ゲテモノとは、例えば東日本編のトップは札幌市郊外の「滝野霊園」。広大な敷地にモアイ像やストーンヘンジが建ち並ぶ。対象スポットは泥臭い観光施設やら、どっかに行っちゃった系のおじさんが執念でこしらえた私設博物館やら秘宝館(TV番組「探偵ナイトスクープ」の得意分野)やら怪しい古道具屋やら。

著者・撮影の都筑響一はこの本の元になった「SPA」での連載の前には『TOKYO STYLE』というユニークな写真集を出した人。オシャレでも小綺麗でもない普通の(というか、ほとんどは小汚い)東京暮らしの部屋の数々を撮影・紹介したもの。

ファッション雑誌に載っている東京アーバンライフなんて嘘、居心地よいものでもない。少々汚くても快適な住空間が本当の(かどうか知らないけれど)トーキョー・スタイル。というのが前著なら、『珍日本紀行』にあるのは、JRやJTBのコマーシャルに流れる「美しい日本」の正反対。猥雑で薄汚くて薄っぺらで低俗で煽情的なスポットばかり(土俗ってやつですか)。

どっちが本当の日本なのかは知らないし、どっちが気持ちがいいか楽しいかは人によるだろう。けれども、ともかく1100ページ、怖いもの見たさ・醜いもの見たさも手伝って、ところが意外にもどこか精神の深いところを揺さぶられつつ、ページをめくる人も、きっと多いはず。

「美しい日本」を旅する、容貌も心根もさほど美しくない私たち、という幻想と現実のなかで、なまっちょろく暮らすのもいいけれど、この偉大な仕事、全国341件の「珍日本」を2巻に収めた偉大な出版物を買ってページをめくっても、バチはあたりません。


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