2012年11月18日日曜日

〔今週号の表紙〕 第291号 カモメ 小津夜景

今週号の表紙〕 
第291号 カモメ

小津夜景


前に住んでいた都会の海。
波の汀に、カモメが品よく並んでいる。

この町の海辺には、子どものカモメが全くいなかった。
いつも大人だけがあそびに来て、外界に興味のない面持ちで、のんびりと散歩するのである。
成長してもあまり大きくならない種らしく、すっきりとしたその姿は砂浜にばらまいた小花のようで、見飽きなかった。

ところかわり、今住んでいる田舎は近所に巨大な団地と化した崖があって、出産&子育てが非常に盛んである。
それで海辺も、おびただしい子どもの声で凄いことになっている。
どうやって砂浜まで来たの?と声をかけたくなるほど小さな灰色の幼児や、ウリ坊じみた茶褐色の児童、お世辞にもきれいとは言いがたいまだら模様の少年少女(でも毛は柔らかそうな感じ)等が、歩く練習や飛ぶ練習をしたり、人に近づいてきたり、ひどくせわしなく、これはこれで見飽きない。


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