樋口由紀子
自分より大きなものを見に通う
住田三鈷 (すみた・さんこ) 1937~1991
格言っぽい川柳である。小さなことにこだわって、くよくよしていたら、ふとこの句を思い出した。自分より大きなものとは一体何だろう。大きなものなんてまわりにいっぱいある。山だって、川だって、木だって、みんなみんな大きい。人だって私みたいに小さくない。作者は見えるものすべてに自分にない大きさを感じたのだろう。
掲句のポイントは「見に通う」だと思う。「通う」とはそこに何度も行き来することである。句に具体的な動きが出る。見て通っている間に自分自身も少しは大きくなれるかもしれないと思ったのだろう。生きていくことと同義のような気がする。
住田三鈷は大人しい熱血漢だった。〈石がもし語れば長いものがたり〉〈子も亀もじっと動かぬ洗面器〉〈父死んで母死んでふるさとはまぼろし〉
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懐かしい名前に思わずコメントさせていただきます。
返信削除三鈷という名の由来は「時実新子から一を引いて三鈷です」とにこにこおっしゃったのが昨日のことのようです。
流される箸と茶碗は放さない
でしたっけ。この句もよかったですね。記憶は曖昧ですが。
由紀子さんのご活躍の様子は風の便りに聞いています。おからだ大切に、一層がんばってください。