樋口由紀子
掌の筋に運があるとは面白し
村田周魚 (むらた・しゅうぎょ) 1889~1967
手相占いをしたことのある人は多いだろう。真剣に、あるいは軽い気持ちで、てのひらを広げて、自分を占ってもらう。いくら軽い気持ちであっても、薀蓄を傾けて、なにやら言われるとやはり気になる。この線が伸びているから長生きできますよ、こことここがつながっているから運がありますよ、良いことを言われたら嬉しいが、嫌なことを言われたら落ちこむ。
そんな人の心の微妙さをついて、掌の筋に運なんてあるわけがないと切り込んでいる、皮肉の句だと最初は思った。しかし、よくよく読むと「面白し」である。肯定も否定もしていない。手相占い自体をただ面白がっている。さて、今年はどんな年になると、私の掌の筋には出ているのだろうか。
〈ニッポンは小さくなった脛の灸〉〈盃を挙げて天下は廻りもち〉〈あなた百までとおいてきぼりにされ〉 村田周魚は川柳六大家の一人。関西の「番傘」に対し、関東の「きやり」を育てあげた。
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