相子智恵
エスカルゴ三匹食べて三匹嘔く 金原まさ子
句集『カルナヴァル』(2013.2 草思社)より。
日本人からすると、エスカルゴは初めて食べるのに勇気がいる食べ物だと思う。食べてみると美味なのだが、どうしても蝸牛のグロテスクさを想像してしまうのだ。そこに〈三匹食べて三匹嘔く〉の「三」という数字の不思議さが重なる。「三位一体」や「三種の神器」など、「三」という数字は、何か大きな意味を感じさせる数字だ。
食べて吐いてしまうという循環が、エスカルゴの殻の渦巻きのようにぐるぐると迫ってくる。それが〈三匹〉であることで、その循環の渦の奥にさらに奇妙な世界を見せる。魅力的な気味の悪さだ。
作者は102歳。100歳からブログ(
http://sea.ap.teacup.com/masakonn/)を始めた。帯の惹句に〈102歳の悪徳と愉悦〉。帯文は池田澄子による。〈健気に淫らに冷静に。言葉を以てこんなに強くエレガントに生きることができるなんて!〉 まさにその通り。エレガントでエロティック、魅力的な102歳の不良少女である。
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