相子智恵
寄り合ひてこそ白魚の透けにけり 矢島 惠
句集『邯鄲の宙』(2013.3 本阿弥書店)より。
白魚は生きているときは半透明で、死ぬと白くなる。
半透明の生きた白魚を一匹で見ているときよりも、寄り集まってこそ透けて見えるという。それは実際の景というよりは、心象的な、詩的な把握ではないだろうか。
〈寄り合ひてこそ〉という措辞は、ただ白魚が集まっている状態というよりも、魚たちが意志を持って集合してきているように読めて、擬人化のような体温を感じさせる。
幾匹もの白魚が寄り集まり、集まった魚たちは透明に融けあう。どことなく恍惚とするような不思議な感覚がある。そのまま白魚たちはどんどん透明になって、朧のように消えてしまいそうだ。幽玄な春の一句である。
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