相子智恵
息小さく小さくつかふしじみ蝶 伊藤敬子
句集『淼茫』(2013.2 角川書店)より。
しじみ蝶は1~3cmほどの小さな蝶だ。じっと観察していると、気門のある腹が〈小さく小さく〉動いている。「虫の息」という言葉もあるくらいで、まさに蝶の小さな息遣いに、作者は愛おしさを感じている。
俳句は言葉数が少ないので、リフレインが使われることはそれほど多くはなく、私自身も使うときは慎重になるほうだ。
掲句は、リズムに合わせて読むとすれば、最初の〈小さく〉は「ちさく」で、次の〈小さく〉は「ちいさく」となる。「ちさくちいさく」と舌の上で転がしてみると、「ちいさく」の部分で、こちらまでだんだん小声になってくるような気がする。
全体に「ⅰ」の母音が続くからだろうか。しじみ蝶を思い浮かべながら音読すると繊細さが増して、一読した限りでは見落としてしまいそうな平明な一句が、俄然輝き出すのである。
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蝶々が如何な息して草の中 細見綾子
返信削除という句があり、どのように息をするのだろうかと話題になったことがあった。蛾は羽を開いて止まるが、蝶は羽を閉じて止まる。蜜を吸っているときなどゆっくり羽ばたくことがあるので、それを息と見たのか、腹部にある一対の気門によるお尻の上下を息と見たのか、今度しみじみ見てみようということになったが、なかなかひらひらてふてふなので見定めがたい。
そうか、「気門のある腹が〈小さく小さく〉動いている。」のか。細見綾子の句に照応するようないい句ですね。
猫髭さんありがとうございました。細見綾子の句「草の中」いいですねー。
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