相子智恵
白靴やコルクを割ればポルトガル 中尾公彦
句集『永遠の駅』(2013.4 文學の森)より。
ポルトガルの海辺でワインのコルクを抜いて飲んでいるのだろうか。白靴が乾いた地中海の空気によく映えている。
……と一応は、その場面を想像できる句なのだが、想像できる場面だけで読んでしまうと、何かが抜け落ちてしまうような、言葉の組立ての妙がある句である。〈コルクを割れば〉という小さな眼前のものから〈ポルトガル〉という大きなものへ、急にスコンと開けていく詩的なずらし、その意外性の妙味といおうか。
ポルトガルつながりでいうと、加藤郁乎に〈昼顔のみえるひるすぎぽるとがる〉という有名な句があって、この句も下五の取り合わせを解説しようとしても無理であるし、そんなことをしても句の良さを損なってしまうだけである。同様に中尾氏の句に関しても、像が結ぶとはいえ、解説的な鑑賞では句を輝かせることはできず、かえって野暮に思える句だと思う。
具象のようで抽象。色合いの明るさだけが心に残り続ける。
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もしかしたら欧州ワインに使われているコルクがほとんどポルトガル製であることと何か関係があるのでははいでしょうか?
返信削除はいでしょうか→ないでしょうかの入力ミスです。すみませんでした。
返信削除Hatsukiさま、ありがとうございました。なるほど!
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