樋口由紀子
小糠雨やにわに踊り出す兵士
北野岸柳 (きたの・がんりゅう) 1946~
「小糠雨」が以前と以後の境になった。小糠雨に濡れることによって、何かがふっきれたのだろう。この踊り、抑えていたものが溢れ出て、踊るしかない、涙を浮かべながらの、踊りと読むこともできる。しかし、ふざけて踊っているようにも読める。
が、踊り出すのは「兵士」である。やっぱり胸にじんとくる。ふざけて、笑いながら踊っていたらなおさら悲しい。兵士は他人から与えられた使命を行っていて、本当にやりたいことができない生き方を強いられている人を指しているように思う。自己戯画化して、兵士は岸柳自身のような気もする。小糠雨を前と後、どっちが本物の彼だろうか。どっちも岸柳だろう。人間の、生きて有ることの本質を見据えている。
北野岸柳はユニークでエンターテイメント性のある川柳人で、エフエム青森「これでも川柳おれは岸柳」という番組を10年以上放送していた。「おかじょうき川柳社」前代表。
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