2013年8月4日日曜日

【俳誌拝読】『雷魚』第95号(2013年8月)

【俳誌拝読】
『雷魚』第95号(2013年8月)


発行所:雷魚の会、編集人:寺澤一雄。B5判、本文24頁。

同人、亀田虎童子の最新句集『合鍵』について太田うさぎが、レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』の一節(船旅で眺める夕日)への言及から稿を起こし、
前句集『色鳥』の明るいテンポはより落ち着いた調べとなり、平易な表現は更なる自然体を纏って全体を柔らかく包む。然しその日の差し方を「渋み」や「恬淡」と形容するのはちょっと違う。随所に顔を出すのは茶目っ気と言うべき機知の輝きであり、皓皓としてしたたかな気概である。
と評する。

以下、同人諸氏の作品から。

玉葱の干されてゐたが抜け落ちる  寺澤一雄

白南風に鳥籠とわが頭蓋あり  増田陽一

たためなくなつてしまつて紙風船  宮路久子

手鏡を伏せれば蝶の溺れけり  太田うさぎ

吹けば飛ぶ風に吹かれて端居せり  亀田虎童子

夏に入る半透明の薬包紙  小島良子

春眠し秒音のない腕時計  小林幹彦


(西原天気・記)

0 件のコメント:

コメントを投稿