2014年3月28日金曜日

●金曜日の川柳〔福島真澄〕樋口由紀子



樋口由紀子






祝歌を水児がのぞく母は新嫁

福島真澄 (ふくしま・ますみ) 1929~

衝撃的な内容の句である。花嫁はかって子どもを堕胎している。その子どもが母である新婦を、お祝いの歌が歌われている祝宴を、どこからか覗いているというのである。

三面記事にでもなりそうな意味ありげなドラマなのに、「祝歌」「水児」「新嫁」の言葉の展開は妖しい雰囲気を漂わせ、物語を紡いで、それでいて、不思議に格調のある一句に仕上がっている。「新嫁」は幸福の絶頂にあり、誰もが望んでいる姿とは限らない。「祝歌」を複雑な思いで聞いている人もいる。何を訴えているのだろうか。

〈開けゴマ 盗まれた小銭 蜂になれ〉〈喚きたい涙ならば魚語よ光れ〉〈百八つ吸うた口ほどすみれ摘む〉 『福島真澄集』(短詩型文学全書 昭和48年刊)

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