近未来型家族
山田露結
家族を連れて回転寿司という近未来型ハイパー飲食店に入った。ほほう。昼どきとあって、どの席も近未来型家族でいっぱいである。店内にはいくつかの回転レーンが設置されていて、その上を陽気な音楽に合わせてまぐろ、はまち、真鯛、甘えび、たこ、いか、ほたて、うに、いくら、豚塩カルビ、ローストビーフバルサミコソース、ガーリックソースハンバーグ(さび抜き)、チーズハンバーグ(さび抜き)、杏仁豆腐(さび抜き)、などなどのネタを乗せた寿司が次から次へと流れて来る。ポップだ。カラフルだ。アートだ。しかも、すべて一皿90円。まるで、夢の世界に紛れ込んでしまったようでクラクラする。若い女性店員に案内されてボックス席に座る。女性店員はにこやかに「こちらから注文して下さい」と言って席に取り付けられている液晶画面を指した。はあ? ん? 私は軽い興奮を覚えながら「とりあえず、ビール下さい」と画面に向かって話しかけてみたが、何も反応がない。それを見た女性店員が「指で触れてメニュー画面に進んで下さいね」と言ってクスッと笑った。なるほど、そういうことか。私がしばらく液晶画面に戸惑っていると、目の前をいわしの一群が通り過ぎて行った。私は、感慨深くその一群を見送った。ああ、これで、ようやくウチも近未来型家族になれるのだ。
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